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 光が踊っていました。飛んだりはねたり渦巻いて、まるで生き物のようです。その中からなにか、新しい形が生まれようとしていましたが、ブーブたちはまぶしくて、とてもまともに見ることができません。でも怖がるどころか、わくわくと胸が高鳴ります。なにか素晴らしいことが起きようとしている!
「ホーホー・ホーホーホー!」
 やがて、夏の太陽のような輝きは薄れ、春の朝日の穏やかさが取って代わりました。ようやく目が慣れた三人の前に現れたのは……。


  なんということでしょう! そこにはもはや巨人の姿はなく、代わりにひとりの美しい女性が立っているではありませんか! 優しい光に包まれていながら、自分自身も光をうちに秘めているようでした。ほっそりとした体の上に、喜びに満ちた顔が、そしてその上には、炎のように紅く豊かな髪が揺れていました。その身にまとっているドレスは溶けた金と銀でできているようで、動くと蛍のような光がこぼれるのでした。
 お姫様だ、そうブーブたちは思いました。こんなに貴いひとに会ったのは初めてです。
「ああ、ついに解けた」
 鈴のような声が言いました。
「長い長い苦しみから、ようやく解放されました。あなた方のおかげですね。ありがとう」
 お姫様が優雅な物腰で一礼すると、ブーブたちは照れくさそうに笑いました。なぞなぞ好きの面目躍如といったところです。実を言えば、あの巨人がいなくなってしまって、ちょっぴり残念でもあったのですが!
「なぞなぞかけたやつ、悪いやつ、やっつけるかっ?」
 言いながらも、そんなに悪いとは思ってませんでした。もしかしたら、自分たちにもなぞなぞの魔法をかけてくるかもしれません。そっちの方が面白そうです!
 でも返事は違いました。
「いいえ、その必要はないのです」お姫様はかぶりを振って目を伏せました。そしてささやきましたが、それは自分に言い聞かせるかのようでした。
「かつて私は誇りと尊大さを取り違える過ちを犯したのです。大事なひとにそうと言わず、どころか従わせようとさえしてしまった。共に分かち合うべきものを独占しようとしたのです。呪いは罰、愚かさと意固地さへの。そう、今なら分かる」
 それから顔を上げましたが、もうそこには穏やかな光だけがありました。
「本当にありがとう。私は行くべきところに行きます。告げるべきことを告げるために。私を待ち続けてくれたひとのもとに」
 ブーブたちはがっかりしました。お礼になにもくれないからじゃ、ありません。せっかくの面白いひとときなのに、もうどこかへ行ってしまうなんて!
「なぞなぞやるぞっ! たくさんやるぞっ!」
 するとお姫様は困ったように微笑みました。そして白い人差し指を口にあてて、ちょっと考え込んでから、歌うように言いました。


♪遠くにあっても近くにあり、
近くにあっても見ないと見えない
糸の弱さに鋼の強さ、
金より軽くて、金より重い
それはなあに?


 ブーブたちは顔を輝かせました。なぞなぞだ!
 夢中で頭をひねり出したブーブ。お姫様は優しい目を注いだまま、少し離れました。
 なんの前触れもなく、お姫様を包む光が再び強くなりだしました。びっくりして見つめるブーブたちの前で、美しい微笑みが光の中に溶け込んでいきました。最後にあの紅い髪だけが残り、それさえも消えるや、光は雷のような音を立てて、天に放たれました。
 光が消え、静寂が戻りました。もうお姫様の姿は影も形もありません。紅い髪のひと筋さえも。

 山に夜が戻ってきました。河の流れる音だけが小さく聞こえています。
 ブーブたちは目をぱちくりさせて、辺りを見回しました。お姫様があまりに突然消えてしまったので、もしかしたら、またあの巨人が見つかるような気がしたのです。でも、お姫様にせよ、巨人にせよ、その気配はどこにもありません。
 空にはずり落ちかけた月が留まっています。別の一角にはあの蒼い星。
 おや?
 ブーブは目をこすりました。ぽつんと寂しそうにしていたはずの星が、ひとりぼっちじゃなくなっている!
 蒼い星に寄り添うように、ひとつ、紅い星がきらめいていました。その色に三人は見覚えがありました。蒼と紅の星は、はじめからそうであったかのように、二つでひとつ、確かに天に輝いていました。
 お姫様のなぞなぞの答え。ブーブたちはそれがなんとなく分かったような気がしました。でもそれを言い表す言葉を三人はまだ知りません。いつか知ることがあるでしょうか? それは分かりませんが、今は何も言わず、三人は山を後にしたのでした。
  ふもとの村では水が戻ったことを祝ってお祭が開かれました。それがブーブたちのおかげだと知ると、村人たちは驚きつつも大いに誉めそやしました。小さな幻術師が村を救ったのです! 三人は一躍英雄になりました。
 でも三人にとってはどうでもいいことです。それよりなにより、なぞなぞです! あの出来事の前も後も、ブーブたちはやっぱりブーブたち、他の誰でもないのです。
 そして今日もまた山に里に元気な声が響きます。
「遊んでやるぞっ! なぞなぞやるぞっ!」
絵:高橋 守
文:
奥田 孝明 
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