「ここは……どこ?」
わたしが言うと、ムイムイたちは一斉に部屋の一方の扉の方を向いた。そうっと近付くと、なんだか苦しそうなうめき声が聞こえてきた。聞き覚えのある声。
イゴール! ここはイゴールの部屋なんだ。どうやってか分からないけど、ムイムイたちはわたしをイゴールの部屋まで運んでくれたんだ。イゴールはこの扉の向こうで寝てる。声からして、怪我の話は本当だったみたい。
起しに入った方がいいのかな? でも怒らないかな。
わたしが迷っていると、不意にムイムイたちが飛び上がって、四方八方の物陰に隠れてしまった。
「どうしたの?」
ムイムイたちは物陰から、さっきとは逆の壁の方を向いた。そこにも扉があったんだけど、その向こうで人の話し声が聞こえてきた。あいつらだ!
鍵を開けようとする音がした。
わたしは咄嗟に、近くの机の上にあったロープをつかむと、なるべく音を立てないように用心しながら、一方の端を机の脚に引っ掛けた。反対側を握って、扉の横にしゃがみこむ。
まさにその瞬間、扉が開いて、ごろつきたちがなだれ込んできた。今だ!
わたしは無我夢中で思いっきりロープを引っ張った。
先頭が足を取られて倒れこみ、後ろの連中がその上に続いた。罵声、それと引っ張られて机がひっくり返り、騒々しい音を立てた。
逃げようとしたけど、すぐ捕まっちゃった。あいつらにもわたしが誰なのか、分かったみたい。必死にもがいたけど、どうにもならない。
「お前か! “狂犬”の連れだからっていい気になってられんのも、今日までだ。今から、やつをバラす、そうしたら次は……」
「誰をどうするって?」
ぎょっとして、ごろつきの動きが止まった。全員の視線が声の方を向く。
イゴールが戸口に立っていた。抜き身の大剣を担いで、仁王立ち。どこも怪我なんかしてないように見えた。
不意打ちしか考えていなかったごろつきたちは、完全にうろたえた。目の前に標的がいるのに、ここにいる言い訳をなんとかしてひねり出そうとしてるみたいだった。
「今回は見逃してやる……失せろ」
にらみつけるその顔の、迫力のもの凄さと言ったら! ごろつきたちは悲鳴を上げながら、武器も捨てて、我先にと出口に殺到した。
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